金融政策の目的

はじめまして

グリーンキャベツマンといいます。

これから清水誠 著の「負の利子率政策」

の第1章「マクロ安定化政策」について書いていこうと思います。

 

1.1金融政策の目的

金融政策の目的は物価の安定と経済成長の二つがある。この場合の経済成長は生産量の拡大と雇用促進と仮定する。金融政策の目的が物価の安定と経済成長の二つがあるとき、フィリップス曲線といわれるトレード・オフになる。トレード・オフとは二兎を負うもの一兎を得ずということわざに近い。

フィリップス曲線は失業率が低下するとインフレーションが上昇し、失業率が上昇するとインフレーションが低下する傾向にあるという経験則を表したものでイギリスの経済学者フィリップスが1958年に論文で報告。ここでのインフレーションとは一般物価の上昇率とする。一般物価とは経済全体位の平均的な物価のことである。

オークンの法則は失業率が低下すると実質GDPが増加し、失業率が上昇すると実質GDPが減少するという法則でアメリカの経済学者オークンが1962年に論文で報告。

フィリップス曲線とオークンの法則を合わせるとインフレーションが上昇すると実質GDPが増加し、インフレーションが低下すると実質GDPが減少するという傾向があることになる。実質GDPとは名目GDPから物価の変動を除いたもので産出量自体を表したもの。インフレーションが上昇することで実質GDPが増加することになると、インフレーション上昇による金額増加が相対的にGDPを増加させているのではなく、産出量そのものの増加につながっていることになる。

フィリップス曲線とオークンの法則を合わせて作った物価上昇が実質GDPを増加させるという法則は、キッドランドとプレスコットが考えた時間非整合性を金融政策に生じさせる。

キッドランドとプレスコットの時間非整合性問題は例えば、政府に物価の安定と経済成長の二つの目標があるとし、二つのどちらがより重要か適当に評価付けするとし、民間企業と労働者が現在の物価水準を参考にして金融政策の結果生じる将来の部下水準を予測し賃金契約を結ぶとする。物価変動を考慮せず、通貨価値・名目で賃金契約を結ぶことにする。

このとき、契約時に予測した物価水準以上の物価にする金融政策が実施されると名目で決まっている賃金は生産する者の価格より実質的に減少するため雇用を増やし、より生産することで利益を得ようとする。このとき、政府は雇用を増やすために民間予測より高い物価水準を達成しようとする。

一方、民間企業は金融政策後の物価水準と一致するように、実施される金融政策を考え、高めの物価水準を予測し契約しようとする。政府が物価の安定を保てなくなるほど高い物価水準を民間企業が予測し賃金契約を結ぶと政府は物価を上げて雇用を増やすことをあきらめることになり、民間企業の予測と一致する。

金融政策後の物価水準を民間企業に正確に予測されてしまうと実質賃金の減少も雇用の拡大も起こらないため政府が民間企業に必要以上の雇用を増やそうとしても実現しないので物価だけが高くなる。

以上のキッドランドとプレスコットの時間非整合性の例は民間企業が政府の金融政策を正確に予測するという点で非現実的であるが、長期的にはいずれ名目賃金が上昇していき、物価に追いつく可能性がある。

この例の状態のとき実質賃金が上昇する過程では生産性は減少していくのである。このとき政府がさらに物価を上昇させると、物価だけが上がり、生産性が減少するスタグフレーションが起こる可能性がある。