自然産出量

  1. 3 自然産出量

別の考えは、産出量を物価上昇率が0のときの産出量である自然産出量にすると、自然産出量のときの失業率低下は、フィリップス曲線の理論から外れ、インフレーションを上昇させない。

自然産出量という目標と実際の産出量の差を需給ギャップまたは、産出量ギャップという。自然産出量以下しか産出量がない状態をデフレギャップ、自然産出量以上をインフレギャップという。

自然産出量と実際の産出量の関係は時間と様々な要因によって変化していく。技術の進歩による生産性の向上は、自然産出量自体の量を増やし、インフレーション上昇が起きないように調整され、この場合産出量が増える。

しかし、現実的には、自然産出量と物価上昇率を正確に測ることができない。このため金融政策では、さまざまな指標を吟味しながら運営されている。自然産出量を目指すことで生産性を増やした場合に失業率が高くなった場合、雇用の促進ができない。しかし、その場合は金融政策の問題ではなく財政政策や法律・労働市場に問題があると考える。

日本政府の統計上の失業率の低さを信じるならばそのような問題は起きていないと考える。金融政策の目標は物価の安定で価格の粘着性を早く解決させるために産出量を自然産出量にすることがデフレ脱却につながると考えられ、現在はデフレギャップの状態だと考えられる。

物価の安定の最低限の目的はハイパー・インフレーションの阻止である。ハイパー・インフレーションが起こる条件は通貨が持続的に膨張することと、人々の多数が効率のインフレーションを予測することの二つの条件が起きた場合に起きる。

通貨が持続的に膨張したとしても通貨が使われなければ支出が減り物価が下がる。人々の多数が効率のインフレーションを予測した場合でも通貨量が限られていれば支出が減り、物価も高くつかない。