政策ツール

2.1 政策ツール

 

これまでの過程では金融政策で物価や産出量を直接操作していたが、実際に操作することはできない。中央銀行の金融政策で産出量を自然産出量に近づける方法は、政策金利とマネタリー・ベースの二つの政策ツールを操作することである。

政策金利とは銀行間市場で取引される短期の利子率のことである。銀行間市場とは、銀行などの金融機関の間で資金の取引を行う市場のことで日本ではコール市場と呼ばれている。 

日本銀行政策金利は一夜越し(オーバーナイト)の無担保翌日物の利子率となっている。マネタリー・ベースとは銀行などの金融機関が中央銀行に開設している当座預金または準備預金といわれるものと、銀行以外の民間企業が保有する現金通貨を合わせたもので、ベース・マネーやハイパワード・マネーとも言われる。

政策ツールは二つあるが政策金利とマネタリー・ベースは別々に操作できない。なぜかというと、政策金利で操作される銀行間の決済にマネタリー・ベースを構成する中央銀行当座預金が使われているため政策金利を操作するとマネタリー・ベースも操作していることになる。

政策金利の利子率を低くすることが金融緩和になる。なぜかというと、銀行間市場での利子率を低くしたということは、金融機関同士で利息を取ることのメリットが減り、貸出しまたは資金供給は減る可能性がある、利息が低いので中央銀行からお金を借りるときにかかる利息が減り、デメリットが低くなったことから資金の需要が増える可能性がある。この金利の変化により、マネタリー・ベースは金利が低くなると中央銀行からの借り入れが増え、中央銀行に開設されている銀行や金融機関の当座預金が増えマネタリー・ベースが増える。

逆に、金利が高くなると、利息が高くつくので中央銀行からの借り入れを返すことにより当座預金が減り、マネタリー・ベースも減る。つまり、金利を引き下げ続けることはマネタリー・ベースを増加させ続けているという考えである。

政策金利には名目利子率の0下限といわれる金利は0より下に下げられないという考えがあり限界がある。政策金利なしでマネタリー・ベースを操作することはできないとする日本銀行の関係者の考えと、コントロールできるとする経済学者の考えがある。

まったくマネタリー・ベースを操作できないということは、ハイパー・インフレーションを阻止することができないことになるので、中央銀行が金融機関への貸し出しを規制する形でマネタリー・ベースの膨張を抑えることができると考えられる。